CFO

P&GのAnnual Reportをざっと眺めてみる

こんにちはゲンタです。

今日は世界No1のFMCG企業であるP&GのAnnual Reportを眺めながら
気づいたことを徒然に書いていこうかと思います。

まあ、気楽に読んでください。

ただ、先日も話している通り米国企業の株主重視姿勢は
日本企業と大きく異なり、これからこっちの方に向かっていくわけですから
先に見本を知っておくと仕事でも得だし、投資家としても得ですよ。

これは真似できるポイントですね。

PGの配当金は67年間累進配当の実績

Annual Reportでデカデカとグラフとして表示されているのが配当実績です。
高らかに133年間無配なし、67年間累進配当を継続と謳っています。

実際、とんでもなく凄いことです。
常にEPSとキャッシュフローを成長させないとできないことですからね。

株主としては安心としか言いようがないですね。

日本企業のアニュアルレポートで1956年からの配当がどうだったかなんて
記載している企業は見たことがありません。

この辺りも全然違いますね。

(Source:P&GのAnnual Report)

Total Shareholder Returnが
IndexのReturnとの比較して勝ってることを示す

次にデカデカと示されているのがTSRでした。
これは株主が2018年に株を買っていたら、2023年末で配当金とキャピタルゲインで
トータルでいくらになっているか?を指数化して示したものです。

簡単に言うと、2018年に100ドル持っていたら、220ドルにしましたよ
と言っています。

S&P500やS&P500のFMCGのインデックスと比較しても上の成績であると言ってます。

これだけ株主のリターンについて重要性をおいて説明しているアニュアルレポートも日本ではあまり見たことないですね。

これも真似できるポイントですね。

(Source:P&GのAnnual Report)

 

一体どうやってパフォーマンスを上げているのか?

キャッシュフローへの気合いが日系企業と違う

次に感じたのが、キャッシュフローに対する気合いです。
これも結局は、株主様にお渡しできるお金を生み出す上で
重要な指標だから重視しているんですと言っています。

その中で、Adjusted FCF(ほぼ、通常のFCF=営業CF-投資CFと考えて良いです)が重要であり、Adjusted FCF productivity=Adjusted FCF/NPを重視しているとしています。

あまり見たことない指標ですが、要は当期利益に対してFCFがどれだけ生産性高く創出されているのかをチェックする指標です。

これらの指標をシニアマネジメントの評価に使っているともあり、
これが事実上のKPIと言うわけです。

なぜなら、株主へ還元するキャッシュ創出だからですね。

(Source:P&GのAnnual Report)

P&GのKPI

P&Gは何をKPIにしているのかと言うのは
アニュアルレポートの来期ガイダンスのスライドからわかります。

こちらですね。

(Source:P&GのAnnual Report)

PL指標はほぼ成長性でチェック(売上、利益、EPS等)
日系企業ではほぼみられないKPIとして実効税率、FCFなどが入っています。
実効税率はEPSへ大幅に影響があるためでしょう。

日本企業もこの辺りをKPIにしてみるのも面白いかもしれませんね。

あとは、自己株買いや配当の総額水準を示しています。
結局、最後は株主還元がどれくらいできるかが肝だからですね。

キャッシュフローがどうなっているか?

これが営業CFと投資CFです。

この中でお気づきの点はありますか?
僕は驚愕したのが、APの変化でプラスのキャッシュフローになっていることです。
売上が増えているとはいえ、こんなにプラスになるだろうか。。
(その答えは次のSupply Chain Financeの活用にあります)

ARの変化によるキャッシュアウトも異様に小さいように感じます。

その結果、営業CFは高水準を継続できているように見えます。

(Source:P&GのAnnual Report)

サプライチェーンファイナンスの活用

ここの記載も結構、特徴的でした。
Extended Payment Terms and Supply Chain Financing(SCF)というところです。

先ほどのキャッシュフローのAPによるキャッシュプラスの要因がこれだろうと思います。

SCFって言われてもわからないよ

はい、これは最近流行っていて、川崎重工なんかも取り入れて
キャッシュフローを数百億円改善したっていう記事が日経に出てましたね。

供給網の資金効率化、世界で拡大 利用残高115兆円

信用力のある大企業がサプライチェーン(供給網)全体の資金繰りを効率化する仕組みが世界的に拡大している。大企業が銀行などと契約し、取引先が大企業向けの売掛金を期日前に回収できるようにする。利用残高は2022年末で約8600億ドル(約115兆円)と3年で2.4倍に急増したが、企業の開示と実態が離れ、財務状況が把握しにくくなるとの指摘もある。

(Source:日経新聞)

要は、仕入れ先の業者に対する支払い条件を遅らせて、仕入業者は必要に応じて
P&Gが契約したSCF BankへARを売却することによって、
キャッシュフローを改善することができるというものです。

この時に、大事なのが信用力はP&Gによって担保されるので、
仕入業者の信用力は下がらないというところです。

まあ、手形取引と何が違うのかねっていう感じで、
手形が姿を変えてSCFという手法に変わっただけかなと思います。

そして、SCFを使ってP&Gはさらに支払い条件を良化(支払いサイトを伸ばす)
させています。

SCFを使えるようにしてあげるから、支払い条件を遅らせることに合意せよと言っているわけですね。エグい・・・

しかし、これも全てはキャッシュフローを株主還元できるように良化させるためだというわけです。

(Source:P&GのAnnual Report)

BSはどうなっているのか?

まず、Treasury Stock(=自己株)がものすごい大きいですね。
Equity 47に対して、TS 129です
結果、アセット計に対するEquityも相応に小さいです。
こんなBSは日本では見たことがないです。

さらに売上増加しているにも関わらず、Working Capitalの構成要素である
AR ,Inventory,APはいずれもほぼ横ばい

Screenshot
(Source:P&GのAnnual Report)

まとめ

結構長くなりましたが、まとめます。

P&Gの財務戦略のポイント(気付き)

  1. 株主還元への気合いが強い。133年間無配なし、67年間累進配当を継続、株主のリターンについて重要性をおいて説明
  2. キャッシュフローに対する気合いが強い。株主様にお渡しできるお金を生み出す上で重要な指標だから重視している
  3. Adjusted FCF productivity=Adjusted FCF/NPを重視し、これをシニアマネジメントの評価KPIにおいている
  4. 日系企業ではほぼみられないKPIとして実効税率、FCFなどが入っています。実効税率はEPSへ大幅に影響があるため。
  5. SCFを使えるようにしてあげるから、支払い条件を遅らせることに合意せよと言っている(2014年より開始)
  6. Equity 47に対して、TS 129と、Treasury Stock(=自己株)の占める割合がかなり大きい。

ということで、今日は以上です。

大変勉強になりました。
真似できるところが結構あるなという感じです。

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終わり

ゲンタ

こんにちはゲンタといいます。

自己紹介をします。

<昔>
・元ニート兼プータロー
・零細企業経理部で伝票を起票したり請求書を発行したりと作業仕事
・年収は300万円で、超いけてない経理マン

↓その後、改善施策を実施

<今>
・海外CFO
・従業員数千人企業の管理部門、M&A、FP&Aを統括
・年収は数千万

大きく変わることができました。
変わるポイントは作業型から思考型に仕事を変えていったことでした。

ブログのコンセプトは、 Beyond the Financeと言います。

なんだそりゃって感じですよね?

”作業地獄型の経理から脱出して、思考型経理になろう”
というのがその意味です。

思考型経理って一体なんだろう?と思っていただけたら
下記のリンクから読み進めていってください。

皆さんの人生が変わるきっかけになるかもしれません。

よろしくお願いします。

このブログの目的~Beyond the Financeはじめに こんにちはゲンタです。 僕は大学時代にさぼってしまい大学卒業後も就職もせずにぷらぷらとニートになりました。 その後、...

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