CFO

【解説】ニチガスから学ぶ財務戦略

こんにちはゲンタです。

今日はニチガスの財務戦略を解説したいと思います。

ニチガスはLPガスを売っている会社なのですが、
財務が優れているので近年、株価は同業他社比較で2〜4倍程度の成長を遂げています。

PBRはなんと4倍ってことで、すごいなっと言うよりは
高すぎじゃないか・・・とも思ってしまいます。


(出所:日経新聞)

なぜ、このようなことが起きているのかって言うと
CFOが優秀で、財務が優れている点が大きく影響しています。

我々、経理マンとしては学んでおくべきだなというわけで、
ニチガスの財務戦略を解説してしていきます。

ニチガスの財務戦略のポイント

まとめると次の2点となります。

  1. 事業による利益成長のストーリーをシンプルに示し実行
  2. BSのコントロールにより無駄な資本は持たず株主還元

当たり前だろって感じですが、
やはりそれを本気でやっている(数値を示して実行し切っている)ところが
差異を生んでいるところだと思います。

無駄な資本を持たずに株主還元と言ってもできてない会社がほとんどです。
実際は無駄な資本を持って、無駄なキャッシュや余剰資産を持っているけど
少しずつ減らしているというポーズを取ってるくらいです。

この辺り、具体的にどのように①と②を実行していっているのかを説明します。

ニチガスのエクイティストーリー

ニチガスのエクイティストーリーを見ていきます。


(出所:ニチガスの成長ストーリー)

このエクイティストーリーのKPIをピックアップすると次のようなところです。

2026年3月末KPI

  1. 事業再編含む利益成長によりNP150億円
  2. ROE目標22%
  3. 総還元性高100%超
  4. 自己資本比率は40%に低減
  5. 時価総額5,000億円

②のROEがえぐいですよね。22%って。
伊藤レポートで言われているのが8%なので、22%ってとんでもなく高い水準です。

さらに総還元性高100%超ってこれも明記している会社はレアすぎます。

それだけ無駄な株主資本を削ぎ落としていくぞっていう宣言ですよね。
そもそも、彼らの事業で事業利益を高い成長率で引き上げていくのは
難しいと思うのです。

そのような中で、PBR4倍もの高いバリュエーションがついているのは
やはり財務戦略によるところが大きく、ROE22%を実現するために
資本効率を極限まで高めていこうとしているんだなと読み取れます。

じゃあ、これを実際どうやっていくんだろう?
ほんとにできるの?

株主からのこれらの不安を次のスライドで払拭してくれます。

将来の資本と利益の見通しを視覚化


(出所:ニチガスの成長ストーリー)

ROEの伸びがえぐいです。1年で15%から20%と5%も上がっています。
その手法というのが、下記のとおりです。

財務戦略=不要な株主資本は持たないという戦略

①不要の低収益資産の売却と還元⇨資本効率の向上
②高収益資産の積み上げ⇨利益の向上

これを実行するために、BS項目まで目標数値を明示している企業は非常に珍しいです。
それくらい徹底的に分析し切っているから出せるということなんだと思います。

LPガスなどの収益率の良い資産を積み増し、都市ガスなどの収益率の低い資産を減らしています。

ニチガスの財務戦略の何が他社と違うのか?

徹底的にやり切っているところです。
開示資料を見て私は下記の点で他社と異なっていると感じました。

他社と異なる財務戦略のポイント

  1. BSCF資本戦略の見通しを3カ年でクリアに数値化して提示(他社は細かな数値まで出さないことが多い、また、そもそもそこまで社内でも分析していない)
  2. ROE目標値22%が他社より高い(他社はせいぜい10%くらい)
  3. 総還元性高100%超が他社より高い(他社はせいぜい50%くらい)
  4. 高収益資産を増やし、低収益資産を減らし数値を見せる(他社は方針を言うだけ)
  5. 自己資本比率の低下を堂々と戦略化(普通は自己資本比率の低下を戦略としては言わない)
  6. 政策保有株のゼロ化(他社はゼロまで行かない)

    ここまで詳細にBS CF項目について記載している企業はありません。
    CFOの意思が強く、社内で浸透している企業なんだな・・と感じられます。

    下記抜粋して示しますが、えぐいくらい詳細です。

(出所:ニチガス成長ストーリー)

これらの戦略とも一貫し、政策保有株式はなんとゼロ化しています。
その結果、被保有の株式も消えています。
通常、この被保有についてまで、有価証券報告書で語っている会社はありません。

(出所:ニチガス有価証券報告書)

まとめ

ニチガスの財務戦略のポイントをまとめます。

2026年3月末のKPIは資本政策面で非常に意欲的な内容(ROE22%、総還元性高100%超など)になっている。

2026年3月末KPI

  1. 事業再編含む利益成長によりNP150億円
  2. ROE目標22%
  3. 総還元性高100%超
  4. 自己資本比率は40%に低減
  5. 時価総額5,000億円

これらの実現可能性を担保するために、非常に詳細な分析を社内で行い
これを外部に他社と異なるレベルで開示している。

他社と異なる財務戦略のポイント=学ぶべき箇所

  1. BSCF資本戦略の見通しを3カ年でクリアに数値化して提示(他社は細かな数値まで出さないことが多い、また、そもそもそこまで社内でも分析していない)
  2. ROE目標値22%が他社より高い(他社はせいぜい10%くらい)
  3. 総還元性高100%超が他社より高い(他社はせいぜい50%くらい)
  4. 高収益資産を増やし、低収益資産を減らし数値を見せる(他社は方針を言うだけ)
  5. 自己資本比率の低下を堂々と戦略化(普通は自己資本比率の低下を戦略としては言わない)
  6. 政策保有株のゼロ化(他社はゼロまで行かない)

以上にように
マネジメントの資本政策に対する本気度が他社と異なる点で優れており、
これらから学べることは多いにあると思います。

将来的には他の企業もこのような開示をするになると思われ、
早めに真似してしまえば、逆にいうと勝てるということですね。

今日の記事はこちらのニチガスの成長ストーリーを参考に書きました。

僕は、優れた財務戦略はどんどん学んで真似していこうと思います。

今日は以上です。

 

こんにちはゲンタといいます。

自己紹介をします。

<昔>
・元ニート兼プータロー
・零細企業経理部で伝票を起票したり請求書を発行したりと作業仕事
・年収は300万円で、超いけてない経理マン

↓その後、改善施策を実施

<今>
・海外CFO
・従業員数千人企業の管理部門、M&A、FP&Aを統括
・年収は数千万

大きく変わることができました。
変わるポイントは作業型から思考型に仕事を変えていったことでした。

ブログのコンセプトは、 Beyond the Financeと言います。

なんだそりゃって感じですよね?

”作業地獄型の経理から脱出して、思考型経理になろう”
というのがその意味です。

思考型経理って一体なんだろう?と思っていただけたら
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皆さんの人生が変わるきっかけになるかもしれません。

よろしくお願いします。

このブログの目的~Beyond the Financeはじめに こんにちはゲンタです。 僕は大学時代にさぼってしまい大学卒業後も就職もせずにぷらぷらとニートになりました。 その後、...

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